クッション・ゼロ
建設原価の透明化手法
クッション・ゼロとは
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コストダウンが達成できないわけ
コストダウンの追求は企業の永遠のテーマです。
しかし、掛け声倒れになっているケースが多いのも事実です。どうしてなのでしょうか?
それは、重要な課題を置き去りにしているからです。その課題は「原価(コスト)の透明性の確保」です。
HALは、この解決法として「原価の透明化手法クッション・ゼロ」を提唱しています。
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クッション・ゼロとコストダウン
矛盾するようですが、クッション・ゼロ=コストダウンではありません。
コストダウンとは「原価を低減する」ことですが、クッション・ゼロは「原価を透明にする」ことです。
両者は似て非なるものです。ただし、クッション・ゼロを行なえば原価は透明になります。
「原価が透明」になれば、当然ムダが見えます。様々な失敗も見えます。
それらを減らしていこうというのは人間の自然な気持ちです。
透明性の確保こそが、真のコストダウンへと繋がるのです。
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クッションの存在
しかし、重要性を理解していても、原価の透明性が確保できている企業は少数です。それはなぜでしょうか。
透明性の確保を邪魔しているものがあるのです。それが「クッション」という「余裕」の存在です。
「余裕は必要」との思い込みが透明性を阻害しているのです。「余裕」というクッションの中身を強制的に見えるようにする手法。
それがクッション・ゼロです。
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クッションをゼロにする
余裕を一切見込まない実行予算を作ることで、施工中に発生する様々なクッション(利益を失う要素)が見えるようになります。
この発生が早期に判明すれば利益回復の手も打ちやすくなります。回復出来なかったクッションは、結果として実行予算をオーバーすることになるでしょう。しかし、これはこれで認めるべきものなのです。それでも、最初からクッションを見込んでいた「これまでの実行予算管理」より最終原価が下がることは実証済みです。しかも、クッション要素がデータとして残ります。
その発生原因、発生メカニズムの解明等の分析がもたらす効果を考えてください。これらのことを実現するのがクッション・ゼロです。
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クッション・ゼロの目指すこと
我々が減らしたいのは現場の「原価」だけではありません。トータルコストです。
流行の「見える化」にしても、含まれているクッションが分らないデータを幾ら集めてもその効果は薄いでしょう。
利益の創出を妨げている真の原因をクッション・ゼロ手法で見つけ、組織全体で「解決=コストダウンへの道」を進めていく必要があるのです。
クッション・ゼロの概念
1
不確定原価の存在
以下の図を見てください。
原価「透明化」の阻害要因は、実行予算の中に不確定原価という余裕(クッション)を認めることにあります。
不確定ということは「原価になるか利益になるかが決まっていない」ということです。
それが予算上、「原価」として認められることが問題なのです。
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利益が上がらないわけ
建設会社のほとんどは、現場に「粗利死守」を要求します。
しかし、建設工事には不確定要素が付きまといます。それでも「粗利死守」を要求されるのです。
工事責任者としては、先の図1にある「不確定原価」を厚くした予算が欲しくなります。これは当然の心理です。
限界原価で予算を作る場合を考えれば分ります。かなりの確率で予算をオーバーし、怒られます。でも、その予算こそ最も高い利益を獲得する可能性のある予算なのです。それを最初から捨てているのです。
高い利益獲得への挑戦を評価せず、安全ではあるが、低い利益を守れという。競争が激化する中、これで利益が上がるはずも無いのです。
これからの企業にとって、クッション・ゼロは必須のアイテムと言えます。
3
利益の対立線
さすがに経営者は、経営の勘で上記の矛盾に気が付いています。
だから、不確定原価の少ない予算を求めます(図2の右側)。
しかし、工事責任者の意識は逆です。不確定原価をできる限り多く認めさせることに全力をあげます(図2の左側)。
結果として「社内対立線」と呼ぶ粗利ラインをめぐっての社内攻防になります。なんとも空しい光景です。
4
クッション・ゼロに取り組む
社内対立線を消し、利益を上げる道はクッション・ゼロで実現できます。
クッション・ゼロは、現場を締め上げようとか、協力会社の利益を残らず吸い上げようという手法でもありません。
各個人、各企業の努力を、「工事」あるいは「企業」という一つの運命共有体に集約させる手法です。
内部対立という無駄を解き、共に協力して限界原価を下げる方向に変えます。
従来の実行予算は「陣地死守型」の予算です。「これ以上は下がってはならん」という予算です。
これに対し、クッション・ゼロ式実行予算は「目標攻撃型」の予算です。「あの目標を勝ち取れ」という攻撃計画書であり、その実現をフォローする手法です。「では、防衛はどうするのか」という疑問が当然に湧くと思います。その答えは、クッション・ゼロを学べば分かります。
書籍:クッション・ゼロ
「建設業の明日を拓く」シリーズ第2巻
建設原価の透明化手法 クッション・ゼロ
建設業の明日を拓くシリーズ 第二巻「クッション・ゼロ」が発刊されました。
建設原価の透明化とその実践的手法としてのクッション・ゼロ。
その提唱者であり発案者である著者書き下ろしの「建設生産管理」指南書、待望の第1弾。
クッション・ゼロの概念からツールにいたるまで、建設業の原価管理の透明化における内容が記されています。
書名 | クッション・ゼロ |
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サブタイトル | 建設原価の透明化手法 |
シリーズ | 「建設業の明日を拓く」 シリーズ 第2巻 |
著者 | 安中 眞介 株式会社ハルシステム設計 |
定価 | 3360円(税込) |
発行日 | 2008年9月27日 |
発行・発売元 | 株式会社メディアポート |